佐藤さん家のふたりとわたしと。
「…ねぇ、大志は…好きな人いる?」

映画の声だけが聞こえる空間で、抱いていたクッションにさらに力を入れながら震える唇で揺れるような細い声で聞いた。

「うーん、海外の人だと…」

「そーじゃなくて!…そーゆうのじゃなくて、…好きな人いるの?」

私の方を見た大志と目が合った。

ドッドッと心臓の音が大きくなる。

「…芽衣は?いるの?」

うまく伝えられる自信はないけど、もう自分の気持ちを隠すのはやめようって思ってるから。

「いるよ、好きな人」

大志の目の見て、届いたらいいのに。

私の気持ち。

ふっと大志が笑った。

「じゃあ素直にそう言った方がいいよ」

「え…」

「まだ間に合うよ」

「間に合うって何が?」

私から視線を逸らした大志が沁み込むような柔らかい声で話し出す。

「ほとんど生まれた時から一緒にいるけど、別にそうしなきゃってわけでもないし、変わっていくのもありだと思うよ俺は」

「え、どーゆうこと…?」

言ってることがよくわからなくて、必死に追い付こうとしたけど、ぐるぐる回るだけで何のことかわからなかった。

言葉にされて初めて気付く。

「俺に気遣ってないで付き合えばいいのに、奏志と」

あ、なるほど。
そーゆう意味だったんだ、さっきのフォローはそーゆうフォローだったんだね。

背中を押してくれようとしたんだ。
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