佐藤さん家のふたりとわたしと。
「「芽衣、ホワイトデー何欲しい??」」

奏志の部活がない火曜日、今日は3人で帰る日。

「えっとねぇ」

顎下に手を置いて考える。

「…イヤホン?」

「「去年もそれだった!」」

「だってすぐ壊れちゃうんだもん」

毎年こうして2人からホワイトデーが近くなると聞いてくれる。それにはワクワクして私も答える。

「一昨年は水筒じゃなかったけ?保温付きの」

「そうそう!今も使ってるよ!」

ごそごそとスクールバックからピンクの水筒を大志に見せた。

「お前なんでそう毎回色気のねぇもんばっかリクエストすんだよ」

「実用性あっていいでしょ!めっちゃ役立ってるから!」

ちなみに私がバレンタインに2人にあげたものと言えば、おばあちゃんと結華お姉ちゃんと織華ねぇーちゃんと作ったチョコレートケーキ。

1人一切れ、うちのお兄ちゃん含め佐藤さん家みんなにあげた。

そしてお返しはみんなからそれぞれもらえる。

最高にハッピーなホワイトデー!

「じゃあイヤホンでいいの?」

「うん!いい!」

「イヤホンて…2年連続イヤホンて」

奏志が隣でぶつぶつ言ってるけど気にせずイヤホンをお願いした。
あっても困らないし、よく使うし、パステルカラーの可愛いやつにしてもらおう!

「じゃあばいばい!また明日ね!」

2人に手を振って、家に入ろうとすると大志に呼び止められた。

「今日怜くんは?いる?」

「今日もいないよ、なんか最近バイト入ってなくても家にいないの多いんだよね」

「そなんだ。うちでご飯食べる?」

「ううん、今日は昨日の残りあるから大丈夫!」

「じゃあ…あとで行ってもい?」

「え…、うん」

一瞬返事に困ってしまった。

その瞬間走る緊張感。

ドッと心臓が鳴り響く。

「待ってるね!」

何でもない顔をして、もう一度ばいばいをして家に入った。

悟られないように、いつもと変わらない私を演じて。
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