佐藤さん家のふたりとわたしと。
「芽衣、付き合うのやめる?」
「………え」
想像していなかった言葉に、握ったローファーを持つ手が力なく抜けた。そのままぶらんと下に落ちた。
「なんか無理して笑ってるみたいだし、前みたいな関係のが俺らには合ってない?」
「…私のこと嫌いになった?」
「そうじゃないけど…嫌いになったとかそうじゃなくて、別に前みたいな関係もよかったし、それも悪くないかなって」
あ…、なんでだろう。
嫌なのに、どうしたらいいかわからない空間がすごく嫌なのに…っ
前みたいな関係に戻りたいわけでもないの…
やばいっ、泣く…!
「…普通って何!?普通って何したらいいの?」
「は?」
「付き合えて嬉しいけど、いざッ付き合い始めたら何したらいいかわかんないし、2人になったら緊張して何話せばいいのかもわかんなくて…っ」
こぼれ出た涙を拭う、少し俯きながら。
「何話せばなんてなんでもいいよ。昨日何のテレビ見たとか何食べたとかそんなんで」
「でも…っ、それって楽しい?」
涙を拭きながら顔を上げた。
「うん、普通に」
「普通ってなんなの!?」
「キレどころがわかんないんだけど!」
私だってわかんない。
自分で自分がわかんない。
でも涙が出て来ちゃうんだもん。
もう全部がわかんない。
「…てゆーか、芽衣は何したいの?俺を楽しませたいの?」
「…嫌われたくない!」
嫌われないように、うまく応えられるように、ちゃんと彼女になりたい。
今までどうしたいとかどうなりたいとかあまり考えたことなかったけど、好きだって言われたら嬉しいし、付き合えるなら私だって普通に彼女になりたい。
「嫌いになるとかもうないでしょ」
いつの間にか肩から片方だけ落ちてしまったスクールバックのショルダーを掛け直してくれた。
「俺は芽衣といたらなんでも楽しいからそれでいいよ」
「………っ」
俯いたまま、声が震えて何も言えなかった。
だって大志といて楽しくないことなんてないのに。
大志が背負っていたリュックを下ろして、何か取り出した。
「これホワイトデーのお返し!」
「…もうもらったけど、イヤホン」
目の前に出されたりぼんの付けられた可愛い小さなラッピング袋。
「あれは俺と奏志から」
「うん、だからもうもらってる!」
「これは…俺から」
開けてと促され、その場でりぼんをほどいた。
「かわいい…」
ハートの散りばめられたブレスレット。
「1人で買いに行くの勇気いったんだぜー」
あ…、もしかしてあの日…?
“俺今日先帰るから”
そっとブレスレットを私の左腕に着けてくれた。
「ありがとう!」
「それでいいんだって。変にどうにかしようとか思わないで、いつも通り!それが普通!」
「………うん」
にこっと笑った大志と目が合う。
その瞬間、そっと近づいた唇。
ぼんっと顔が赤くなった。
「全然普通じゃないんだけど!」
「なんで?普通じゃない?付き合ってるんだから」
「!!!」
あれやっぱ普通ってなんなの?
どっからどこまでがいつも通りなの!?
やっぱ全然わかんないし!!!
「帰るよ」
ブレスレットの着いた左手を引かれる。
言ってることとしてること全然違うんだけど!
だって、ほら…
恋人繋ぎをしたのは初めてじゃんっ。
…でも本当はこんな風に手を繋ぎたかった。
やっぱり緊張はしちゃうけど。
「手汗が止まらない…!」
「あはははっ」
「…嫌いにならないでね」
少し後ろをついて歩く私に振り返り、繋いでいない方の手を添えて耳元で囁いた。
「てゆーか、俺だってそれなりに緊張はしてるから!」
「!」
「がんばってんだよ!」
ちょっと今の顔ー…っ
「?、何?どしたの?」
「ううん、カッコよかったなぁって思って…っ」
「!?」
大志が即座に私から視線を逸らした。
でも耳が赤くなってるのがわかったから。
それを見たらおんなじなんだって自然と笑えてきちゃった。
「ふふっ」
「笑うなよっ」
「大志かわいーねぇー♡」
「バカにしてるな!?」
2人で笑い合った。
そうだ、この感じ。
この空気が私と大志だ。
誰が何と言おうときっと絶対私が彼女なんだ♡
「………え」
想像していなかった言葉に、握ったローファーを持つ手が力なく抜けた。そのままぶらんと下に落ちた。
「なんか無理して笑ってるみたいだし、前みたいな関係のが俺らには合ってない?」
「…私のこと嫌いになった?」
「そうじゃないけど…嫌いになったとかそうじゃなくて、別に前みたいな関係もよかったし、それも悪くないかなって」
あ…、なんでだろう。
嫌なのに、どうしたらいいかわからない空間がすごく嫌なのに…っ
前みたいな関係に戻りたいわけでもないの…
やばいっ、泣く…!
「…普通って何!?普通って何したらいいの?」
「は?」
「付き合えて嬉しいけど、いざッ付き合い始めたら何したらいいかわかんないし、2人になったら緊張して何話せばいいのかもわかんなくて…っ」
こぼれ出た涙を拭う、少し俯きながら。
「何話せばなんてなんでもいいよ。昨日何のテレビ見たとか何食べたとかそんなんで」
「でも…っ、それって楽しい?」
涙を拭きながら顔を上げた。
「うん、普通に」
「普通ってなんなの!?」
「キレどころがわかんないんだけど!」
私だってわかんない。
自分で自分がわかんない。
でも涙が出て来ちゃうんだもん。
もう全部がわかんない。
「…てゆーか、芽衣は何したいの?俺を楽しませたいの?」
「…嫌われたくない!」
嫌われないように、うまく応えられるように、ちゃんと彼女になりたい。
今までどうしたいとかどうなりたいとかあまり考えたことなかったけど、好きだって言われたら嬉しいし、付き合えるなら私だって普通に彼女になりたい。
「嫌いになるとかもうないでしょ」
いつの間にか肩から片方だけ落ちてしまったスクールバックのショルダーを掛け直してくれた。
「俺は芽衣といたらなんでも楽しいからそれでいいよ」
「………っ」
俯いたまま、声が震えて何も言えなかった。
だって大志といて楽しくないことなんてないのに。
大志が背負っていたリュックを下ろして、何か取り出した。
「これホワイトデーのお返し!」
「…もうもらったけど、イヤホン」
目の前に出されたりぼんの付けられた可愛い小さなラッピング袋。
「あれは俺と奏志から」
「うん、だからもうもらってる!」
「これは…俺から」
開けてと促され、その場でりぼんをほどいた。
「かわいい…」
ハートの散りばめられたブレスレット。
「1人で買いに行くの勇気いったんだぜー」
あ…、もしかしてあの日…?
“俺今日先帰るから”
そっとブレスレットを私の左腕に着けてくれた。
「ありがとう!」
「それでいいんだって。変にどうにかしようとか思わないで、いつも通り!それが普通!」
「………うん」
にこっと笑った大志と目が合う。
その瞬間、そっと近づいた唇。
ぼんっと顔が赤くなった。
「全然普通じゃないんだけど!」
「なんで?普通じゃない?付き合ってるんだから」
「!!!」
あれやっぱ普通ってなんなの?
どっからどこまでがいつも通りなの!?
やっぱ全然わかんないし!!!
「帰るよ」
ブレスレットの着いた左手を引かれる。
言ってることとしてること全然違うんだけど!
だって、ほら…
恋人繋ぎをしたのは初めてじゃんっ。
…でも本当はこんな風に手を繋ぎたかった。
やっぱり緊張はしちゃうけど。
「手汗が止まらない…!」
「あはははっ」
「…嫌いにならないでね」
少し後ろをついて歩く私に振り返り、繋いでいない方の手を添えて耳元で囁いた。
「てゆーか、俺だってそれなりに緊張はしてるから!」
「!」
「がんばってんだよ!」
ちょっと今の顔ー…っ
「?、何?どしたの?」
「ううん、カッコよかったなぁって思って…っ」
「!?」
大志が即座に私から視線を逸らした。
でも耳が赤くなってるのがわかったから。
それを見たらおんなじなんだって自然と笑えてきちゃった。
「ふふっ」
「笑うなよっ」
「大志かわいーねぇー♡」
「バカにしてるな!?」
2人で笑い合った。
そうだ、この感じ。
この空気が私と大志だ。
誰が何と言おうときっと絶対私が彼女なんだ♡