佐藤さん家のふたりとわたしと。
「ふぁーーー!よく寝たっ!!」

車から降りると同時、芽衣が両手を上げ伸びをしている。

本当になっ

俺はずっとお前の体支えてたんだからな!

「芽衣、髪の毛ボサボサだよ」

「え?本当?」

大志が芽衣の頭を撫でるようにボサボサになった髪を整えた。

お前の体重も俺が支えてたようなもんだからな!重力2倍だぞ!

…意識的か無意識なのかわかんねぇけど触る瞬間が増えた。

そんな姿をよく目にするようになった。

そんな時は目を伏せて見てないフリをする。

「みんな荷物持ったー?今から部屋割り言うから!」

またレジュメを持った結華ねぇーちゃんの周りを円になるように集まった。

結華ねぇーちゃんの耳元が太陽の光りでキラキラと眩しかった。さっきはそんなことなかったのに、この移動中に着けたらしい。
めっちゃくちゃ気になる耳にぶら下がったミラーボール… そんなピアスあるんだ、へぇ。

いや、もういちいち言うのは止めよう。言い出したらキリがない、うちの派手なねぇーちゃんのことなんて。

「こっちの赤色屋根のコテージが私、織華、芽衣、おばあちゃん、おじいちゃん。で、奥の青色屋根のコテージがお父さん、正志、怜、大志、奏志、優志」

…じーちゃんだけ女子扱いだった。

「水道、シャワー、トイレは共有スペースにしかないから気を付けてね。あとこれ地図ね!」

どんだけ前から準備して来たんだというぐらい万全のとーちゃん自作敷地内地図を1人1枚もらう。
地図を見ると共有スペースまでは徒歩3分って書いてあるけど、あまり灯りがなくて夜は出歩きたくないな。夜中のトイレなんか絶対行きたくねぇ。

「はい!じゃあ荷物コテージに運んだらバーベキュー会場行くよ!」

自分の荷物を持ってコテージの中へ入った。
木造建築の部屋の中は隅に冷蔵庫が置いてあるだけで、まっさらな状態、とーちゃんが言うには6畳程度。レンタルして来た寝具をみんなで運び、重ねるように置いた。これを全部敷いたら床一面布団で埋まりそうだった。

バーベキュー場は共有スペースを通り越したところにあった。
他にも客がいるみたいだけど、俺らほど大所帯はいなさそうで一応グループごとに区切られていて他の人たちと交わることもなさそうだった。

来る途中寄ったスーパーで買った材料を使ってちょっと早い夕飯作りが始まる。
料理上手なばーちゃんとなんでも仕事が早いとーちゃんのおかげで作業はどんどん進む。

テキパキと的確な指示を飛ばしながら、これだけの大人数のご飯の量だって関係なく調理は順調だ。

それに加えて最初からやる気のない優志と途中から飽きた大志と芽衣は家から持って来たフリスビーで遊んでいた。

それをにこにこ微笑ましそうに見ているじーちゃん。

元々準備する頭数に入ってねぇからな。

結華ねぇーちゃんも正志にーちゃんもせっせと準備する中、怜くんがパシャパシャと携帯で写真を撮っていた。

野菜を切る織華ねぇーちゃんを被写体にして。

「怜、携帯じゃなくてカメラがいいよ!僕いいの持って来たから!」

とーちゃんのアドバイス…

え、そこ?そこじゃなくね??

つーかなんか2人の距離近くないか…別に仲悪いわけじゃないと思うけど、いいイメージもなくて、そんな微笑み合う仲だっけな?

それを結華ねぇーちゃんがちょっかいかけながら邪魔してる。でもなんか嬉しそう。

…………。

ふーん、そうか。

付き合ってんな、あれ。

なんだよ、みんな楽しそうにしちゃってさ。

「奏志にーちゃんもフリスビーやろうよ!」

「あ、あぁやる!」

優志に呼ばれて俺も準備要員から外れた。フリスビー思いっきり楽しんだ。
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