佐藤さん家のふたりとわたしと。
すっかりみんなが寝静まった夜中、なんとなく眠れなくてぼーっと天井に吊るされた小さな豆電球を見ていた。

ギッチギチに並べた布団、ジャンケンで一番隅っこを手に入れた。隣の布団からはすやすやと大志の寝息が聞こえる。全然眠くねぇな。

―ブブッ

枕元に置いてあった携帯が鳴った。
こんな時間に誰…


“起きてる?もしくは起きて!”


なんてだいたいわかっていた。いつものグループLINE、既読になったのを見たからかすぐに次の文章が送られてきた。


“起きてるのどっち?”


残念ながら俺の方だけど。


“トイレついてきて!”


そんなことだろーと思ったわ。


“俺。大志起こす?”

“そぉーーーちゃーーーーん!!!起こさなくていい!来て(;_;)”

“こんな時だけそーちゃんて呼ぶな!”

“今日はまぐり選手権勝ったの私だもん!お願い聞いて(;_;)”


そーいえばあの時願い事聞かなかったな、それが今来るとは思ってなかった。


“今出るからコテージの前で待ってろ”


そう返信をして、ジャケットを羽織り外に出た。

「奏志ありがとーーーーーーっ」

「はまぐり選手権の罰ゲームだからな」


「結華お姉ちゃんも織華ねぇーちゃんも起きてくれないからどうしようかと思った~よかった~!」

携帯のライトを頼りに薄暗い道を歩く。寄り添うように俺にくっついてすでに半泣きな芽衣が隣を歩いた。

トイレの前に着くと、ここで待っててね!絶対どこも行かないでね!呼んだら返事してね!とうだうだ言いながら一向に行こうとしない芽衣の背中を押して入らせた。

「わぁよかった、一安心♪」

そのせいもあってかトイレから出て来た芽衣はめちゃくちゃ満足そうだった。

「奏志ありがとうね!」

「本当だよ」

春の夜中はまだ冷える。特に自然豊かなここはより寒く感じた。
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