佐藤さん家のふたりとわたしと。
「戻ろう!」

また芽衣がほとんど距離なんてない距離に近付いた。

どうしても、それには耐えられなかった。

「…~っ、お前さぁ!」

つい、一歩離れた。

「なに?」

なのに全然わかっていない芽衣はキョトンとして首を傾げた。それは俺を余計苛立たせた。

「いいの?こんな深夜に男と2人って」

「何今更言ってんの?男って奏志じゃん」

「でも男だぞ!」

冷たい空気、しーんとする景色。

芽衣と交差する視線。

「…わかってるよ、暗いの怖かったから」

「わかってねぇよ!」

「わかってる!でも…奏志は嫌かもしんないけど、私からしたら家族なんだもんっ」

「あいつは違うのに?」

芽衣が困った顔をしたのには気付いていた。

「…家族だよ」

でも気付かないフリをした。

「正志お兄ちゃんだって優志だって、結華お姉ちゃんも織華ねぇーちゃんも、紘一パパだって誠一おじいちゃんも佐和子おばあちゃんもみんな…っ、大志も奏志も家族なの」

弱々しい声。

当たり前のように一緒にいて、当たり前のように好きになった。

それはあまりに自然で、それが壊れるなんてこと考えたことなかった。

考えたくなかった。


芽衣を嫌いになる日は来ないから。


ずっと芽衣を好きでいたかった。

俺のものにしたかった。

「怜お兄ちゃんと2人だったら今ここにいられたかもわからないもん」

俯く芽衣を本当は抱きしめたかった。

「昔そう言ってくれたのは奏志でしょ?」

「…悪い、そうだった」

でもやめた。

「早く…帰ってくるといいな」

「うん、もう4年ずっと海外だからね。お母さんたち元気してるかな…?」

そんなことで泣かせたくはない。

「便りがないのはいい知らせって言うから大丈夫だろ!」

ふと空を見上げた。
夜空にはキラキラと星空が一面に広がっていた。

「星、めっちゃ綺麗じゃんっ」

俯いていた芽衣も空を見る。

「本当だ!前に3人で見た時とは全然違うね!」

「さすが田舎だな!」

「うん!」

もう泣き顔は見たくない。

あの日大志と誓ったんだった。

絶対に俺たちで芽衣を守るって、あの日決めたんだ。

「あいつも起こしにいこうぜ!せっかくだから!」

「えー、起きるかなぁ?寝起きめちゃくちゃ悪いのに」

とーちゃんにバレないように大志を叩き起こして3人で星を眺めた。

澄んだ空気が気持ちいい。

芽衣が楽しいねって笑っていた。

俺らの真ん中で。
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