佐藤さん家のふたりとわたしと。
駅前のお気に入りの雑貨屋さんに来た。
キラキラしたものがいっぱい売ってるここは癒しスポット。すぐに私の機嫌も直っちゃって、棚に並べられたオブジェやアクセサリーを手に取ったり戻したり見ているだけで楽しい。

なのに大志が余計なこと言い出すから。

「怜くんとなんでそんなケンカになったの?」

「…大志も私とケンカしたいの?」

睨みつけてしまった、なんとなく。

「そーじゃなくて、それ言ったら俺らだってどーなんの?」

「それとこれは別!お兄ちゃんの彼女は嫌なの!」

「…だからブラコンって言われるんだよ」

小声でボソッと呟かれたセリフが言い終わらないうちにグーで思いっきり背中をパンチした。

「痛っ」

ふんっと鼻先であしらった。

「…てゆーか今までもいたじゃん怜くんモテるし」

「でも見たことなかったし、結華お姉ちゃんが誰とも仲続きしないって言ってたから」

なんか今回はそれが違った。それはきっと女の勘ってやつで。

お兄ちゃんが本当に好きな人なんだなって、そう思えば思うほど寂しくて…。

「ううん、もういいや!そんなこと!それより誕生日のこと考えよ!」

パンッと両手を合わせて気持ちを切り替える。

もうこの話はおしまい、もうなかったことにする。そんなことより楽しいことを考えるんだ!

「大志は何欲しい?しょーがないからあとで奏志にも聞いてあげる」

当日はいつも佐藤家で盛大なパーティが開かれる。

「プレゼント考えといてね、常識の範囲内だよ!」

みんな集まって、いっぱいいっぱいお祝いをするのがお決まり。美味しいご飯食べて、大きなケーキ食べて、トランプしたり、人生ゲームしたり、お誕生会は楽しいことばかりだから。

「…プレゼントはいらない」

「え、なんで?遠慮しなくていいよ、お小遣い溜めてるから!」

大志と視線を合わせた。

「プレゼントはいらないから、俺は2人がいいんだけど」

じっと私を見る瞳…、もう緊張するとか何話したらいいかとかそうやって悩むことはなくなった。

だからこの交わした視線もドキッとか、そんな風に思えなかった。

「それもいいけど、せっかくなら集まった方がいいじゃん!そっちのが楽しいよ!」

だって誕生会はみんなでやりたかったから。

「芽衣はそんな風に思ってくれないの?家族より彼女と過ごしたいって言ってるのに?」

きっとここは嬉しいって思うとこなんだと思う。私だって嬉しくないわけじゃない。

「…なんでそうゆうこと言うの?」

だけどそれは一番言ってほしくない言葉だった。

「なんでって、そこなんで?って聞くとこじゃなくない!?思うでしょっ」

「思っても言わないでよ!言ってほしくないの、そんなこと!」

「は!?そんなことって何だよ!?そんな軽く見られてんの!?」

あ、やばい。

このままだと本当にケンカしちゃう。

「…大志ならわかってくれると思ってた!」

ケンカなんてしたくないのに。

今日はなんかダメだ、止められない。

「もういいよ!!」

その場から去るように走って帰った。

大志を1人置いて。
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