佐藤さん家のふたりとわたしと。
TAISHI Story
「あ、妹の彼氏じゃん」
走っていく芽衣を追いかけようと思ったら、結華ねぇーちゃんからの超タイミング悪い電話で買い物を頼まれた。
スーパーでココア買って来いって、それぜってぇ結華ねぇーちゃんが飲みたいだけのやつじゃん。
でも我が家では姉の言うことは絶対、逆らうこともできず引き受けた先で会った。
「怜くんも買い物?」
「おぅ、たまには俺が行っとかないとな~。つーかデートじゃなかった?片割れに聞いたけど」
怜くんがあれやこれやと物色しながらカゴに入れて行く。こ慣れたその姿は生活じみてる。
「…ケンカした」
「ふっ、どーせ可愛い話だろ?お菓子の取り合いか?」
「バカにしてるでしょ。てか怜くんともケンカしたって聞いたけど」
「………。」
急に黙った。
あの怜くんが何も返してこなかった。
目を伏せて、珍しい表情をしていた。
「ジュースおごってやるよ、ケンカした理由?聞いてやるから」
そう言って棚で並べられた冷たいコーラを取ってくれた。そのコーラを持って、怜くんのあとをついてお会計してもらった。
スーパーの隅っこにあるイートインスペース…つーかただのベンチだけど、怜くんの隣で買ってもらったコーラの蓋を開ける。
「なんでケンカしたんだよ?」
怜くんも同じようにコーラを飲んでいた。
「………。」
「なんだよ?」
ぶっちゃけめちゃくちゃ言いずらいんだけど、でも目を細めた怜くんがじーっと見て来るからそれに耐えきれずゆっくり口を開いた。
「…もうすぐ誕生日だねって言うから、今年は…芽衣と2人がいいなぁって言ったら」
これを兄の怜くんにって超恥ずかしい。
「けっ、んだよ。結局可愛い話かよ」
ほらもうバカにしてるし!
「で、芽衣はなんて?」
「…そんなこと言ってほしくないってめっちゃ怒って帰ってった」
「ふーん…」
ごくごくっと怜くんがコーラを流し込む。
つーかこれ悪いの俺なの?俺じゃないよね!?さすがに妹に甘々な怜くんでもわかってくれるよね!?
半分ぐらいコーラを流し込んだ後、ふぅーっと息を吐いて怜くんが話し出す。
「…あいつ、家族コンプレックス抱えてるからな」
「え、何?」
「もう何年も親は帰って来てないし、子供の頃から頻繁に家にいたわけでもないし。“家族”ってやつに恐怖感じてんのかも」
「どーゆうこと?何に怖がってんの?」
怜くんの冷静な落ち着いた、よく芽衣が言うあの声。
「“いなくなる恐怖”ってやつ」
とーちゃんもにーちゃんもねーちゃんも弟も…、たくさんいる俺には思ったことないやつだった。
「俺にも異常に執着するし、だからあれだろ?俺に彼女出来ると取られたみたいに思うんだろ」
「…それでケンカになったんだ。別れてって言われたの?」
「それはさすがに言って来ねぇけど、ホワイトデーにやったチョコレートの入ってた缶とってあったみたいで投げつけてきやがったから」
「子供かよ…」
まぁ缶をとって置くぐらい嬉しかったんだろうけど。
思い返せば怜くんにもらったって言うものちゃんと置いてあったし使ってたもんなぁ、今時オセロってどんなセンスって思ったこともあったけど。
大切にしてたんだ、全部。
「…だから、佐藤家はみんな家族と思ってんだよ」
「……。」
「お前と2人で過ごすより、佐藤家のが大事ってことだ!」
「…怜くん、それすっごい棘感じるし俺も佐藤家だし」
でも芽衣がそんな風に思ってたとか…
いや、そうやって思ってたはずなのに。
いつの間にか自分の気持ちに夢中になって忘れてた。
あれは芽衣の12歳の誕生日だった。
走っていく芽衣を追いかけようと思ったら、結華ねぇーちゃんからの超タイミング悪い電話で買い物を頼まれた。
スーパーでココア買って来いって、それぜってぇ結華ねぇーちゃんが飲みたいだけのやつじゃん。
でも我が家では姉の言うことは絶対、逆らうこともできず引き受けた先で会った。
「怜くんも買い物?」
「おぅ、たまには俺が行っとかないとな~。つーかデートじゃなかった?片割れに聞いたけど」
怜くんがあれやこれやと物色しながらカゴに入れて行く。こ慣れたその姿は生活じみてる。
「…ケンカした」
「ふっ、どーせ可愛い話だろ?お菓子の取り合いか?」
「バカにしてるでしょ。てか怜くんともケンカしたって聞いたけど」
「………。」
急に黙った。
あの怜くんが何も返してこなかった。
目を伏せて、珍しい表情をしていた。
「ジュースおごってやるよ、ケンカした理由?聞いてやるから」
そう言って棚で並べられた冷たいコーラを取ってくれた。そのコーラを持って、怜くんのあとをついてお会計してもらった。
スーパーの隅っこにあるイートインスペース…つーかただのベンチだけど、怜くんの隣で買ってもらったコーラの蓋を開ける。
「なんでケンカしたんだよ?」
怜くんも同じようにコーラを飲んでいた。
「………。」
「なんだよ?」
ぶっちゃけめちゃくちゃ言いずらいんだけど、でも目を細めた怜くんがじーっと見て来るからそれに耐えきれずゆっくり口を開いた。
「…もうすぐ誕生日だねって言うから、今年は…芽衣と2人がいいなぁって言ったら」
これを兄の怜くんにって超恥ずかしい。
「けっ、んだよ。結局可愛い話かよ」
ほらもうバカにしてるし!
「で、芽衣はなんて?」
「…そんなこと言ってほしくないってめっちゃ怒って帰ってった」
「ふーん…」
ごくごくっと怜くんがコーラを流し込む。
つーかこれ悪いの俺なの?俺じゃないよね!?さすがに妹に甘々な怜くんでもわかってくれるよね!?
半分ぐらいコーラを流し込んだ後、ふぅーっと息を吐いて怜くんが話し出す。
「…あいつ、家族コンプレックス抱えてるからな」
「え、何?」
「もう何年も親は帰って来てないし、子供の頃から頻繁に家にいたわけでもないし。“家族”ってやつに恐怖感じてんのかも」
「どーゆうこと?何に怖がってんの?」
怜くんの冷静な落ち着いた、よく芽衣が言うあの声。
「“いなくなる恐怖”ってやつ」
とーちゃんもにーちゃんもねーちゃんも弟も…、たくさんいる俺には思ったことないやつだった。
「俺にも異常に執着するし、だからあれだろ?俺に彼女出来ると取られたみたいに思うんだろ」
「…それでケンカになったんだ。別れてって言われたの?」
「それはさすがに言って来ねぇけど、ホワイトデーにやったチョコレートの入ってた缶とってあったみたいで投げつけてきやがったから」
「子供かよ…」
まぁ缶をとって置くぐらい嬉しかったんだろうけど。
思い返せば怜くんにもらったって言うものちゃんと置いてあったし使ってたもんなぁ、今時オセロってどんなセンスって思ったこともあったけど。
大切にしてたんだ、全部。
「…だから、佐藤家はみんな家族と思ってんだよ」
「……。」
「お前と2人で過ごすより、佐藤家のが大事ってことだ!」
「…怜くん、それすっごい棘感じるし俺も佐藤家だし」
でも芽衣がそんな風に思ってたとか…
いや、そうやって思ってたはずなのに。
いつの間にか自分の気持ちに夢中になって忘れてた。
あれは芽衣の12歳の誕生日だった。