佐藤さん家のふたりとわたしと。
「結華!結華いるか!?」

コートに財布に携帯、必要最低限の持ち物と泣きじゃくる芽衣の手を引いて佐藤家へ走った。

「え、なに!?どうしたの!?」

ドタバタと結華が階段を下りて玄関にやって来た。

「ちょっと呼ばれたから、今から行ってくるから!芽衣には…っ、戻ってきたら俺から話すから!だから…っ」

「ちょっと何よ!?落ち着きなさいって、何があったの!?どこへ行くのよ!?」

あまりに取り乱した俺の声を聞いてか家にいた全員が玄関に集まって来た。

「父さんと母さんが見付かったかもしれない…!」

“行方不明”

それを知っていたのは紘一さんたちを覗いては結華だけ。結華にしか言ってなかった。芽衣にさえもずっと黙って来た。

「だから、芽衣のことよろしくっ」

結華に引っ張って来た芽衣の腕ごと押し付けるように引き渡した。

「嫌だ芽衣も一緒に行く!お兄ちゃんと行く!」

今度は芽衣が俺の腕を引っ張った。

でも連れて行けないと思った。

それはもしかして最悪のことを想定しないといけないかもしれないー…

それよりも何よりも俺自身自分の事でいっぱいいっぱいだった。

「結華、頼んだぞ!」

「怜!ちょっと待ちなさいよ、あんた1人で行く気!?お父さんに電話するから、もうすぐ仕事終わりだと思うし!車で行った方が早いでしょっ」

結華が携帯を開いて紘一さんに電話をかけ始めた。

そうだ、確かに…行き方とか時間とか全然頭が回ってなかった。とにかく早く行かなきゃって…、そんなことも考えられないぐらい冷静さを失っていた。ちゃんと確認するために呼ばれたんだから。

「お父さんあと5分ぐらいで着くって」

「あぁ…、悪い。サンキュ」

結華に言われて少しだけ自分が戻って来た。俺が取り乱してどうする。

「…あと織華、一緒に行ってやりなさい。不安だと思うから。芽衣のことは大丈夫、私たちがいるから!」

紘一さんの車の後部座席に乗せてもらって海外行方不明者について扱ってるという機関のところまで向かった。

ここからだと少し距離があった。

紘一さんがいてよかった。

着くまでの間、少しだけ昔の事を思い出した。


妹が出来た日のこと。
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