佐藤さん家のふたりとわたしと。
「そろそろ寝る時間だぞ」

紘一さんがみんなに声を掛ける。

この時間がいちばん嫌いだ。

広い寝室で子供たちみんな川の字のように並んで眠る。いちばん小さい優志はもちろん紘一さんの隣、あとは好きな様に寝る。俺はいつも端っこだ。

「怜くん、となりで寝よう」

「………。」

「え!?無視!?」

毎度毎度正志が誘ってくる。それがすごく苦痛だった。俺はそんなに寂しそうに見えるのかって。

「「めい一緒に寝よ!」」

「めい、オレのとなりね!」

「オレのとなりだってば!」

「「オレの…っ」」

「わーかった!真ん中に寝てもらえばいいだろ!」

紘一さんにどやされて双子がおとなしく布団につこうとした。

「…めい、れいおにーちゃんと寝る!」

「「え?」」

俺のもとに駆け寄り、きゅっと手を握った。

「いい?」

その手はやっぱり温かくて、俺の方が安心した。

「いいよ」

自然と微笑んじゃうくらいに。

「へぇ、あんた笑えたのね」

仁王立ちをした結華が俺を見ている。

「そっちのがいいじゃない?」

織華ちゃんもこくこくと頷いた。

「「…じゃあ、明日は一緒に寝ようね」」

目を潤ませた双子に、ぽんぽんと紘一さんが頭を撫でる。


もうひとりじゃなかった。


そうだ、俺はひとりじゃない。


こんな温かいぬくもりが隣にあった。


ぴたっとくっついてくる芽衣が少し暑かったけど。

「…れいおにーちゃんだいすき」

そのおかげで心も温かかった。
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