佐藤さん家のふたりとわたしと。
次の日の朝、お兄ちゃんたちが帰って来た。


「人違いだった」


ひどく疲れた顔をしたお兄ちゃんが一言そう言った。

行方不明のままだって、変わりなくそのままらしい。

なぜかよかったって、思う自分もいた。

事情を知る紘一パパとお兄ちゃんから今までの話を全部聞いた。
いつ行方不明になったのか、何が原因だったのか、どれが最後の言葉だったのかー…私の知らないことがたくさんあった。
私が封印して来たあれこれはほんの少しのことだった。

聞いてる間、大志と奏志がずっとそばにいてくれた。

「…結局何もわかんなかったね」

佐藤家の庭の家庭菜園、蛇口に繋がったホースで水やりをする奏志を見ながら大志と木陰のベンチに座っていた。

泣き疲れちゃって、もう出るものもないかも。

「とーちゃんもかーちゃんもどっかで動物助けてるんじゃないの?芽衣と一緒で夢中になったら他のこと忘れちゃうタイプなんだよ!」

「えー、娘と息子ほかっておいて?」

春風が暖かくて気持ちいい。ぽかぽか陽気に少しだけ救われた気がした。

「…お兄ちゃんもずっと不安だったと思うんだ」

妹という立場を使って私はずっと甘えてたんだなって思った。どれだけお兄ちゃんが1人で背負ってきたのか、何もわかってなくて。

それなのにひどいことしちゃった。

「織華ねぇーちゃんが支えてくれるといいなぁ、織華おねぇーちゃんならきっと大丈夫だと思うから」

「ブラコン卒業だね」

「ブラコンじゃないし!」

お兄ちゃんにも心休まる場所ができるといいな。そしたらたぶんもっと楽しくなると思う。

「じゃあ俺が本当の家族になってあげる!」

「え、どゆこと?」

「俺もう18になるから結婚できるよ!」

え…

なんてちょっと甘い雰囲気になった瞬間、水やり中の奏志に思いっきり水をかけられた。

「おい!何すんだよっ!」

「なんかイラッとした空気感じたから」

それで大志がやり返して、私まで巻き込まれて、それで笑い合うのが日常だ。


いつもの日常。


今までもこれからも。

これでいいんだ。

これがいいんだ。
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