佐藤さん家のふたりとわたしと。
「…ぉにいちゃーん!(れい)お兄ちゃーん!」

日向野芽衣(ひゅうがのめい)、高校1年生。

制服のスカートを揺らしながら、たたたっと階段を駆け上がりすぐ手前の部屋のドアを勢いよく開けた。今日は天気がいいのにまだカーテンの閉まったままの部屋は薄暗かった。

「芽衣もう学校行くけど、怜お兄ちゃんは?」

ベッドの上でふとんにすっぽり顔までくるまったままわずかな声が聞こえた。
その横には無造作にいつも掛けてるメガネが置かれ、いかに早く眠りにつきたかったのかがわかる。

「んー…、今日2限から…」

大きな私の声とは大違いで今にも消え入りそうな声。

昨日もバイトで遅かったお兄ちゃんはたぶん朝方眠ったに違いない。

…しまった、寝かせてあげとけばよかったなぁ。

まぁいっか!

「じゃあ行ってくるから!」

「おぉー…、あーあと俺今日遅いから…」

「今日もバイト?わかった!先寝てるね!」

海外に仕事で行ってる両親はほとんど帰って来ない。動物のお医者さん的な仕事らいけど、よくは知らなくて。
私と4つ上の怜お兄ちゃんの2人暮らしをしている。
もちろんそれなりの生活費は送ってくれるけど、早く自立を目指してるお兄ちゃんは死に物狂いで大学へ行きながら働いてる。働き過ぎで心配になるぐらいに。

再びたたたっと階段を駆け下りた。

ソファーの上に置いてあったスクールバッグを手に持ち、ひらりと制服のスカートをなびかせ外に出た。
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