佐藤さん家のふたりとわたしと。
「もういっそのこと怜くんに手紙でも書けば?」

なんかよくわからない提案を大志がして来た。

「お、それいいな!」

何がいいかわからないけどそれに奏志まで賛同して来た。…え、絶対意味わからなくない?

「LINEの返事もしない人が手紙なんて書くわけないじゃん」

「だって怜くんも芽衣がどうしてるか知らないわけじゃん」

部屋の隅にあったゴミ箱を近くまで寄せて、散らかったお菓子のゴミをポイポイと片付けながら“そうでしょ?”と言わんばかりの顔で大志が私を見てくる。
そのドヤ顔の意味がサッパリわからないんだけど。何にそんなに自信を持ってるのそれは。

「別に興味ないんじゃない?私がどうしてようと」

私も自分が散らかしたゴミの数々をゴミ箱に入れた。

「そんなことないでしょ」

「あるよ、絶対!」

私たちが部屋を片付けてる中ずっと黙っていた奏志がゆっくり口を開いた。

「ポストでも作るか!」

これまた全く意味のわからないことを。

「ダンボールあったよな?こないだとーちゃんがでっかい加湿器買って来たときの!あれで作ろうぜ!」

「あー、あった!それ使えるな!まだ残ってるんじゃね?」

手紙からのポスト作る発想をなんで大志は汲み取れた上にやる気なの?双子の共鳴はたまにわからない。

話は勝手に進んで行き、目を合わせた2人がすくっと立ち上がった。

「「取りに行こうぜ!!」」

どこでハモってんの!

私の両サイドをすり抜けようとする2人の腕を掴んだ。

「ちょっと待って!いらないから!そんなのいらない!」

一緒にいる時間が、それなりに長い私も何する気なのかわかってる。嫌な予感しかしないそのダンボールという言葉、しかもでっかい加湿器はさっきリビング通った時に置いてあったやつだ!

佐藤さん家は家族が多いから加湿器もどこよりも大きいんだ!

そんなダンボールで作ったポストをうちに置くとか邪魔なだけ!

それに手紙を投函したとこでお兄ちゃんは絶対読まない!!!

「絶対いらないからっ!!!」

それぞれ私が掴んだ手とは逆の手を胸にあて、一呼吸置いた2人が諭すような口調で話し始める。

「「何を言ってるんですか、僕たちはただ兄と妹の大切な時間を提供したい。それだけです」」

このシンクロ率どうにかならないのかな。その気持ちのこもってない顔は何よっ。

「暇なだけでしょ!今暇だから何かしたいんでしょ!」

そしてニヤッと笑った。

「「バレた??」」

私が掴んでいたはずだった2人の腕、今度は2人が私の腕を掴んだ。
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