佐藤さん家のふたりとわたしと。
マフラーが必要になって来た今日この頃、すっかり冬の風になっていた。

隣はすごーく大きな家、私の幼馴染みたちの家。

「おはよう!」

「おはよう、めいちゃん」

「あれ?優志(ゆうし)だけ?」

お隣さんの1コ下の優志はちっちゃくて可愛くて本当の弟みたい。

「2人は…っ」

と、言いかけたとこでギャーギャーと騒ぐ声が隣の家の中から聞こえた。それはどんどん大きくなり、そのままガチャっと豪快に玄関のドアが開いた。

「あ、おは…」

「「絶対俺の方が背高いよなっ!?芽衣!!!」」

私の朝の挨拶は全部言い切る前にかき消され、たぶん2人の耳には届いてない。

「いや、ぜってぇ俺だから!」

「お前盛ってるじゃねぇか!」

「2人ともおは…っ」

「「だから芽衣はどう思う!??」」

めげずにもう一度言ってみたけどやっぱり届いてない。もうおはようを言うのは飽きめる。

「え~…どう思うって、大志(たいし)奏志(そうし)も一緒でしょ。双子なんだから」

何度これを聞かれ、何度これを答えたことか。もう数え切れないほど遭遇したこの場面。

まぁ言わばルーティーンってやつなんじゃないかと思う。

ん?あれ意味違うかな?まぁいっか!

「だってこいつがさぁ!」

「はぁ!?お前が先に!」

わーわーとわめく双子の背後にゆっくりと影ができた。

「あ…」

言い合いに夢中な2人は気付いていない。

教えてあげるべきかどうするべきか、なんて迷っているうちに鉄槌が落ちた。思いっきり、脳天直撃。

「大志!奏志!朝からうるさいっ!!!早く学校行けっ!!!」

「「げっ、織華(おりか)ねぇーちゃん」」

「は?げって、何…??」

ギロリと織華ねぇーちゃんの鋭い眼差しが刺す。

今日も長く伸びたくせ毛が上手くまとまらなかったのか、なんだか一段と機嫌が悪い。内巻きにしたかったであろう肩より下の髪たちが全部外向いちゃってる。

「「な、なんでもないです!よし学校行こうか!」」

白々しく肩を組む2人。

まぁ、これもルーティーン。

「芽衣、おはよう」

「おはよう」

「学校であいつら騒いでたら締めてやってね!」

「う、うん!なるべく!」

無理めな織華ねぇーちゃんの言い付けに一応頷いてみた。

「さ、行こうか優志!」

さっきの吊り上げた眉毛は何処、柔らかい表情になった織華ねぇーちゃんはサッ優志の隣に並び、さりげなく車道側を歩き始めた。みんな優志が可愛いんだわかる。

すぅっと軽く深呼吸する。

「………よしっ」

気合を入れ直して先を歩く双子のところまで走り、2人の間に割って入った。

「大志!奏志!」

「「おっ」」

「今日帰りにコンビニ寄って帰ろ!新作肉まん食べよ!」
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