佐藤さん家のふたりとわたしと。
「「………。」」

「なんか喋って下さいよー」

「「………。」」

「プラスさんとは何話すんですか?」

「「……………。」」

こんな寒い日に誰も来ないような中庭のベンチに座ってパンをかじる。
奏志と端と端限界に座り、本人いわく手作りらしい弁当をその真ん中で笠原梨々が食べている。

「お2人とも違うパン食べるんですね」

「…そりゃそーだろ」

奏志がけだるそうに答えた。

「味覚も一緒なのかと思ってました」

似てるけど、別にいつも一緒なわけじゃない。

さっき買ったコーヒー牛乳のパックにストローを差す。ここで食べると思ってないからな、なんかあったかいのにすればよかったかも。
とっとと食べて早く教室に戻ろ。

「同じものがいいとかないんですか?これは同じがいいみたいな!」

「「ねぇーよ」」

「つーかお前はなんでそんな俺らに拘るわけ?別に彼氏が欲しいとかじゃねぇんだろ?」

イライラしてるからか奏志の飲んでるリンゴジュースのストローは噛んでぺちゃんこだった。

でもそれは俺も思ってた。

付き合ってほしいって言うわりに、付き合うことに対してリアリティがない。
何をしたいとか、何をしてほしいとか、そこにあんまり熱量がなくて。

俺らの何がよかったんだ?

それは俺らの想像を上回る回答が帰って来た。


「スペシャリティー感じません!!??」


「「は?」」

めちゃくちゃ声のトーン上がってるし、目キラキラさせてるし、それ見た俺らの表情は無。一切の感情を失った。

「唯一無二の存在って言うんですか?2人で1つって言うんですか?それって興奮しません??」

奏志が聞かなきゃよかったって顔してる。たぶん俺もしてる。

「佐藤双子って言うだけで有名ですし、お2人ともカッコいいですし、同じ容姿の人がこの世に存在してる美学…!」

ただただちゅーっとコーヒー牛乳をストローで吸い込んだ。

「そんなお2人の間にいられるなんて、最強神的ポジションですよ!」

「「…………。」」

「まるで守護神のように2人がいる…!」 

「「…。」」

「2人のヒーローに挟まれて気分いいですっ」

2人して残りのパンを無言で食べた。

こーゆうときは一緒だな!
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