佐藤さん家のふたりとわたしと。
「「ねぇ芽衣、宿題見してーーーー♡」」

「………また?」

私の席の前で声を揃えてノートを持ってくる。にこにこと表情まで揃ってる。

「今日俺当たるんだよ、32ページ問5の答えってなに?」

前の席の椅子を引き、勝手に座る奏志。

「俺はやってきたよ!でも合ってるか知りたいだけだから!」

同じように今度は隣の席に勝手に座る大志。

「…いいけど、私も合ってるか知らないよ。てゆーか奏志はせめてやってきて!」

「問5って答え28?大志合ってる?これ」

「たぶん!俺もそれになったわ!」

「ねぇ聞いてる!?」

さらさらと私の答えを写していく奏志と自分のノートと照らし合わせる大志。毎回これ。

「絶対肉まんおごってもらう!」

「おうおうおう、おごってやるって。こいつが」

文字を書きなぐりながら大志を指さす奏志に大志がハッとした顔をした。

「あっ!俺昨日金貸したよね!?ジュース買う金ないからって!」

「は?昨日の事なんて今日覚えてねぇよ」

「じゃあ先週のプリンもなかったことになるな」

「おまっ、あれマジでっ」

ついさっきまで仲良く宿題してたかと思うともう何かのスイッチが入りかけてる。なんて早いんだ。

「もういい!わかったから早く写すなら写す、見るなら見る!放課終わっちゃうよ!」

ケンカが始まる前に止めなければと宿題を促した。

本当言い合いばっかで、すぐ声が大きくなるんだから!


…でも、そうやって言い合える仲なのはちょっと羨ましい。2人の間には2人にしかわからないものがあるんだろうなぁって、ずっと一緒にいてもそれはわからないもん。
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