佐藤さん家のふたりとわたしと。
今日は雨だ。
夏の日の雨はムシムシして嫌いだ。

普段は外の掃除だけど、雨の日は音楽準備室の掃除になる。
ここまで行くのがめちゃくちゃ遠い。

…しかもこの狭い音楽準備室、俺に告白して来た佐々木夏乃と一緒の掃除当番だ。

「………。」

「…………。」

テキトーにモップ掛けをする。
掃除が終わるまであと10分、結構あった。

「佐々木は最近どんな本読んでるの?」

「え、なんでそんなこと日向野くんに言わなきゃいけないの!?やめてよ!」

普通に話しかけたら怒られた。無言よりいいかと思ったのに。ちょっと微笑んでみたつもりだったのに。
まぁいいや、ささっと終わらせちゃお。

「…なんで佐藤さんと付き合ったの?」

「え?」

「日向野くんと佐藤さん、幼馴染みって聞いたけど…なんてゆーか話とか合わなそうだし」

話は合うんだけどな。何話してるのかって聞かれたら思い出せないけど、会話に困ったことはない。

「だからなんで佐藤さんなの?」

なんでって…やばい、マジで理由がない。
でもここでキスしたいからなんて言ったら余計俺の株が下がるのはさすがにわかってる。

もっとうまい、いい感じの言い訳を…!

「…好き、だからかな?」

「でも私にも付き合おうって言ったじゃん」

………、ごもっとも。

速攻論破された。

何度も同じところをモップ掛けしてしまう。こうゆう時のことわざってあったりしないのかな?返答に困って意味なく同じところを掃除してしまう時のことわざ。

「佐藤さん性格キツそうだし、目元すごいし、唇赤いし」

俺が違うこと考えてる間に話は進んでいった。

にしても人から聞くと、とにかくやべぇなアイツは。
でも…

「言うほど嫌なヤツじゃないよ。派手な格好してるけど、素直だし優しいとこあるし。佐々木も話してみたらわかるよ」

俺はそう思ってる、結華のこと。
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