佐藤さん家のふたりとわたしと。
「あんた本当どんくさいわね」

「お前助けようとしたんだろーが!!」

もう一度水しぶきを上げながら顔を出した。それ見て生徒AもBも引いていた。

「助けるならもっとカッコよく助けなさいよー」

「お前も可愛く助けられとけよ…!」

制服のままプールに飛び込むなんて最悪だ。シャツは体にくっつくし、あとメガネがどっか行った。半分くらい見えなくなった。

「あ!これが水も滴るなんちゃらってやつね!」

「微塵も思ってないだろお前。それより手貸せ」

引き上げてもらおうと手を伸ばした時だった。

「ここでイチャつかないでよ!!」

隣で佐々が泣いていた。
たぶん、メガネのない俺にはよくわからなかったけどそんな気がした。

「彼氏なんだからイチャついて何が悪いの!?」

…お前には空気を読む力ってやつはないのか!つーか俺が恥ずかしい!

「…えっと、佐々木。大丈夫?ごめんね」

ぼやーっとする視界だけど、どこに誰がいるかぐらいはわかる。声をかけて手を差し伸べた。バシャ!と水で返されたけど。

「日向野くんが悪いんだから!」

佐々木が叫んだ。

「こんな派手女と付き合って、しかも私に二股持ちかけて!」

持ち掛け…持ち掛けたか、そうだな。持ち掛けたかもなー、あれは。

まだまだ止まらない佐々木の愚痴はプール中に響いた。

「信じられない!最悪!あと思ってたより口が悪かった!」

そりゃ悪かったな。これが俺の通常運転なんだよ。

だんだん呆れてきた俺に佐々木がもう一度大きな声で叫んだ。


「クズ!!!」
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