佐藤さん家のふたりとわたしと。
ーヒュンッ




佐々木が言い終わると同時、物凄い速さで何か飛んできた。
それは佐々木ギリギリのところで水の中に入った。ビックリして声を失うほどに。

「………っ」

結華が盗まれなかったもうひとつの靴を投げたんだ。

そしてギロッと睨みつけた。

「…そんなことも知らないのに怜に好きって言ったの?」

ゆっくりと、重く、結華が話出した。

その気迫に後ろのいる生徒Aたちもすっかり手が出せないでいた。

「怜はねぇ…、しりとりでわざと毎回“る”で終わらせるような性格悪い男なのよ!!!」

おいコラ、マジで何言ってだ!今それ言うことかよ!

「…でもね、優しいし頼りになるし一緒にいたら楽しいし…」

…………。

………。

メガネがあればよかったと思った。
そしたら結華がどんな表情をしていたのかわかったのにって。

「あんたにはもったいないわよ!」

結華と出会って14年、そんなこと言われたの初めてだったから。

「帰る!」

ぐるっと背を向けて歩き出した。

「え!?おい、結華待てよ!」

ここで俺を置いていくのがさすが。
しかも靴もプールの中だし、そんなこと気にせずスタスタと歩いて行くんだから。
結局、結華の靴と自分のメガネを回収していくのは俺の仕事なんだよ。
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