佐藤さん家のふたりとわたしと。
「なんで姉貴に彼氏がいて寂しいんだよ」

「え、思わないの!?えー…」

……あれ、なんだろこの気持ち?

お兄ちゃんとは彼女とか彼氏とかそんな話全くしたことなかったから、急にリアルに思えちゃって脳が追い付いてないのかな。お兄ちゃんだってもう大人だ、そんな人がいたっておかしなことじゃない。2人が言うように普通なのかもしれないけど…。

ぎゅっと抱きしめていたクッションへの力が抜ける。

「そんな落ち込まなくても…」

「まぁ彼氏の1人や、2人?いたことねぇー芽衣にはわかんねぇだろうけど」

慰めようとしてくれた大志の言葉を遮るように、ハッと奏志があざ笑った。

「何それ!じゃあ奏志は彼女いたことあるの!?」

「あるよ」

「あるの!?」

すっごいビックリして大きな声が出た。こんなに一緒にいるのにそんなこと全然知らなかった。

「待っていつ!?いついたの?どんな子?私の知ってる子!?」

ついつい詰め寄るように近付いてしまった。ぐいっと肩を押されるように離された。

「近い!別にいつでもいいだろ!」

「よくないよ~~~~!教えてよ~~~~~!!!」

「教えたらなんかあるわけ?」

「あるよ!…たぶん、なんかあるっ!」

私にそんなうつつを抜かすような出来事がないだけで案外みんなあるのかな?毎日2人とキャッキャ遊んでるのが楽しいって思ってたけど、そう思って毎日過ごしてるのどうなんだ?

急に不安になってきた!だって私も一端の女子高生、そんな花咲かす出来事があったっていいはずだもん!

「…え、もしかして…今は!?今はいるの?!」

「…いたら何?」

「えーーーー!!!いるのー…っ!?」  

叫び過ぎてどんどん声が枯れてきた。

それぐらい衝撃で、私の中にズドンっと来た。

それはなんでかわからないけど。
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