佐藤さん家のふたりとわたしと。
珍しく早く帰って来たから、今日は4人で夕飯を作ろうってことになった。メニューは餃子、なんの違和感もなく私も佐藤さん家の食卓の支度に混ざって参加する。

その足りない買い出しに、ジャンケンに負けた私と奏志で近くのスーパーまでやって来た。

「気になるか?そんなに。どっちでもよくねぇ?」

「えー気になるよー!」

「お前と違ってブラコンじゃねぇからなんとも思わねぇな」

「ブラコンじゃないってば!」

ブラコンにはやっぱピンと来ない。だってそんなにお兄ちゃん好き好きってキャラでもないし、お兄ちゃんのこと考えて日々過ごしてるなんてこと絶対ない。

そりゃあ、あんまり家にいなくて寂しくは思ってるけど…それは単に1人の夜が苦手なだけで、どちらかと言えば暗所恐怖症って話で決してブラコンとかそんなんではない。

「ブラコンだろ。だって誰に彼氏がいようが彼女がいようがどーでもいいし…あ、大志は気になるな」

「ほら!気になるじゃん!」

買って来てと頼まれた餃子の皮を探して奏志の持つカゴに入れる。佐藤さん家は大家族で育ちざかりがいっぱいいるから買う量もうちとは比べ物にならない。

「あいつには負けたくねぇからな」

「そんなこと思うの!?」

その発想も私にはなかった。負ける負けないとか、そんな次元でもないなぁ。そこまで考え至ってないっていうか、なんていうか。

「なんでも先がいい!2番とか嫌だ、あいつのが先に生まれてきた時点で腹立ってんだから」

「ふーん…、それこそどっちでもいい。てか奏志彼女いるんだったら勝ってるじゃん」

「まぁな」

私は永遠に負け組な気がするな。そりゃ私も彼氏には興味あるけど、イマイチ想像出来なくて。

「…付き合ったらキスするとかも考えられないな」

「じゃあしてやろうか」

奏志がグッと私の顔に近付いた。

もう少しで唇が触れるんじゃないかって、ちょっとドキッとした。

「からかってるでしょ!」

すぐに視線を逸らして、ふんっと横を向いた。

「キスのひとつやふたつ教えてやってもいいぜ!」

「いらないし!」

バカにされてるみたいでむかつく、私に何もないからってむかつく!

「はぁ…」

他にもカゴにいろいろ入れていく奏志の後ろをとぼとぼ歩いた。

お兄ちゃんに彼女がいたこともそうだけど、私からしたら奏志に彼女がいることも気になってしまう。

それって変かな?普通はどうなんだろう?

「芽衣、他に欲しいものねぇの?1個なら許してくれるぞ!」

「じゃあタピオカ!」

「お前好きだなそれ、流行り終わってんぞ!」

奏志に買ってもらったタピオカを飲みながら帰った。
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