佐藤さん家のふたりとわたしと。
夜9時を過ぎたところ、お兄ちゃんが佐藤家まで迎えに来てくれた。

「芽衣帰るぞ」

「怜お兄ちゃんおかえり!」
 
織華ねぇーちゃんがお兄ちゃんにって持たせてくれた餃子がお兄ちゃんの夕ご飯。ビールと一緒に美味しそうにお兄ちゃんが餃子を頬張る。

「うまっ!やっぱビールと餃子はいいな~!」

グビグビとビールを流し込むお兄ちゃん、その前でついじーっと見てしまった。

「何?」

「ううん、なんでもない!お風呂入るね!」

すくっと立ち上がって、自分の部屋へ着替えを取りに行く。

“彼女いるの?”

とか恥ずかしくて聞けないし!

“いるよ”

って言われたらますますなんて答えたらいいかわからない!

こんな気持ちになる自分が自分でわからない。どうしてショックとか寂しいとか思うんだろう。

なんでみんなは思わないの?

私だけ全然大人になれないみたいですごく嫌だ。

「芽衣っ」

部屋から戻って来てお風呂場に向かおうとするとお兄ちゃんに呼び止められた。

「なぁに?」

「明日明後日ゼミのレポートやんのに学校泊まるから、お隣さんで泊めてもらえよ」

「いいよ、1人でもう大丈夫だし」

「結華にはもう言ってあるから」

…普段あまり家にいないお兄ちゃんだけど、泊りでいないって日だけは厳しく佐藤さん家へ行けという。

日向野家はお兄ちゃんがルールなのでそう言いわれたら従うしかなく、強制的に泊まるよう強いられ佐藤家に来た。

かと言って、佐藤家に泊まることなんてあるあるでみんなこれといって何か変わるわけでもなく迎えてくれるんだけど。第2の我が家みたいな感じだもん。
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