佐藤さん家のふたりとわたしと。
今日は正志お兄ちゃんにギターを見せてもらう日、初めてのギターにるんるん気分で佐藤さん家へ向かった。

「めい、おはよう」

「おはよう!織華ねぇーちゃん!」

「双子ならまだ寝てるけど…?」

「大丈夫、今日は別の用だから!」

首をかしげる織華ねぇーちゃんの横を通り抜け、お邪魔させてもらう。

2階の奥から2番目の正志お兄ちゃんの部屋まで向かった。
コンコンッとドアをノックして入る。

「いらっしゃい」

すでにギターを準備して、チューニングをする正志お兄ちゃんが椅子に座っていた。チューニングって言葉だけは知ってる、テレビでバンドマンの人が言ってた。

「わぁ!すごい、アコギだ!」

カッコいい!生で見るギターって思ったより大きいんだ!

その前にちょこんっと正座した。

「なんか弾いてほしい曲ある?」

「何の曲でもいいの?」

「僕の知ってるのならいいよ」

「え~っとじゃぁねぇ、チェリー!スピッツの!」

前に結華お姉ちゃんが教えてくれた曲。結華お姉ちゃんは彼氏に聞いたらしいけど、優しい曲で私もいいなぁって思ったから。

「って、正志お兄ちゃんこの歌知ってる?」

「もちろん、知ってるよ」

トントントン、っとギターのボディを叩いて静かに深呼吸した正志お兄ちゃんがギターと共に歌い出す。

おぉ~、カッコいい…!!!

曲の歌詞がまるで正志お兄ちゃんみたいに優しくて、でもどこか切ない。奏でるメロディも声も透き通って聞こえて、なんだかちょっとグッと来ちゃった。

「…~♪」

正志お兄ちゃんが歌い終わると同時大きく拍手をした。オーディエンスは1人だったけど、拍手喝采。

「すごい!めっちゃ感動しちゃった!!」

「そう?ありがとう」

困ってても照れてても正志お兄ちゃんの眉毛はハの字。人の良さが溢れてる。

「芽衣ちゃんもやってみる?」

「いいの!?」

「教えてあげるよ」

そう言われて少しだけギターを触らせてもらった。

ドキドキしながら弦に触れた。触れただけで音は出たけど、あんな簡単そうに弾いてた正志お兄ちゃんみたいには全然上手くできないし、これっぽちもメロディにもならない。

「む、難しい…」

「慣れだよ、やってればできるようになるよ。ジャンジャカーカジャカのリズムで弾いてみて」

必死に左手でコードを抑えながら言われた通り弾いてみる。これがそのうちメロディになるのかな。全くもって出来る気がしないんだけど。

正志お兄ちゃんが教えてくれる隣でひたすらギターを鳴らしていると、バタバタバタっと廊下から大きな音が聞こえた。何事かと思うと勢いよくドアが開いた。

「「朝からうるせぇーよっ!!!」」

双子にひどく怒られた。雑音が鳴り響いてしょーがないって。

ひどいっ
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