旅立ち
彼女は、縛り付けられてしまうまえに逃げようと、そろそろと後ろに下がり、急いで外に飛び出した。

おばはそれ以上追っては来なかった。
良かった。うまく逃げられた。それとも、あきらめてくれたのだろうか。

キギがドアの裏で、ぼんやりとしゃがみこんでいると、家の中から「女の子らしくない」だの「誰に似てがさつなのかしらー」だの聞こえてきた。

そのうち、だんだんと言い過ぎなようなことまで言われ始め、そこまで言うか、と不満顔で立ち上がる。
何度か、カッとなって飛び込みかけたが、閉めた戸をもう一度開けるのも嫌だ。

気にしてない風な顔をして、自分の腰の丈ほどに伸びた雑草を握りしめてみる。

ここは山奥だ。
少し下らなければ、町に出ない。どうせなら、おりていくのもいいかもな、と彼女は思った。


そろそろ、春も終わる。庭の草も、いくらか刈らねばならないだろう。

「……なんだよっ。女の子らしくって」

呟いてみる。声に出すと余計にもやもやと不満が増していった。

自分の台詞に、確かに女の子らしい響きじゃないな、と落ち込みながらも、やり場のない苛立ちに髪をかき乱す。
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