旅立ち
「だいたい、育て親はいいけどさ……《あなたの本当の母さんは、気付けばふらーっとどっかに行っちゃったのよ。父さんも、どっかに行ったのよ!》って、納得出来るか!? 生きてるか死んでるかも、何しててどんな人かも、全然教えてくれないじゃんか! いや、水汲みとか草刈りとかしばかりとか、料理に洗濯に、そんなの以外、ほとんど何も教えてくれない!」
キギにはずっとそれが不満だった。
周りのこと、親戚、家族、家系。自分に関わりがあることは、おばはほぼ何も伝えてくれない。
無性に知りたかった。
知ってどうなるかはわからないのに、どきどき不安になるのだ。
なぜか、たまに、自分は、誰ともつながっていない気がしてしまう。
(……わがままだろうか)
「唯一わかるのは、スィロ母さんは、母さんの姉ってだけだ……」
背後から、がさがさと草を掻き分ける音がした。