灰に汚れた六月に、世界を
今まで、何度も自分の命は危険に晒されてきた。死の恐怖を感じ、体にはいくつもの傷が残っている。呪術師をやめたい、そう何度も思った。それでも続けて来られたのは、魔物や霊のことなどわからない一般人の生活を守りたいと思ったからだ。

だが、一般人たちは自分の命しか大切にしようとしない。自分のことしか考えていない。こんな奴らを守る必要があるのか?魔物より醜く恐ろしいのは、人間たちの方じゃないのか。桐子の心が灰色に染まっていく。

気が付けば、桐子の周りは血の海と化していた。怒りを抑え切れず、その場にいた人間を全て呪術を使った呪い殺してしまっていたのだ。

人を呪い殺した桐子は、悟を含め多くの呪術師に追われることとなり、日本中を逃げ回った。そしてその間、敵であったはずの魔物と親しくなり、守っていたはずの一般人を手当たり次第に呪い殺していった。

しかし、どれだけ呪っても桐子の心が満足することはなかった。どれだけ呪い殺しても、街は見たくもない欺瞞の産物で溢れ返っている。
< 5 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop