灰に汚れた六月に、世界を
「どうすればいいかわかるか?」

仲良くなった魔物にある時、桐子は何気なく質問した。その時に魔物は嬉々としてこう答えたのである。

「それなら一人や二人じゃなくて、街中の人間を殺しちゃえばいいんだよ」

「そうか、その手があったな」

桐子は呪力を高める修行を積みながら、人間に対する復讐をするためだけに生きてきた。そして、十年の時を経てそれは実ろうとしている。



六月三十日の正午、よく晴れた空には飛行機雲が浮かび、道行く人が噴き出る汗を拭いながら歩いている。

「汚い、なんて汚いんだ……」

汚物を見るような目で桐子は道行く人を見下ろす。桐子は今空に浮いており、魔物たちが出す合図を待っているところだ。

湿った夏風が頬を撫でる。あと数分後に、この街は恐怖に突き落とされるのだ。希望は絶望に変わり、この街にいる全ての人間が恐怖と苦痛でもがきながら死んでいくのだろう。そう考えると、桐子の普段緩むことのない頬が緩む。
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