灰に汚れた六月に、世界を
「悪いけど、復讐の邪魔はさせない」

「汚ねぇ人間共が悪いんだ。桐子は何にも悪くねぇよ!」

魔物たちはそう言った後、鋭い爪を勢いよく振り下ろし、呪術を放って戦い始める。その隙に桐子はその場を抜け出し、街を破壊するために空を飛び、呪いを放っていく。

だが数十秒もしないうちに、悟の式神が追ってくる。サメの式神が空を泳いで桐子に近付いてくる。そして、鳥の式神を使って悟も追いかけてきた。

「桐子、待て!もう逃げられない。俺、桐子の罪が少しでも軽くなるようにするから。だからこれ以上、もう逃げないで。俺、俺、桐子が任務が戻ってこなくて、急に呪術で人を殺したって聞かされて、桐子を追うことになって、もう辛いんだよ……」

悟の声は泣き出しそうな声である。桐子の胸が一瞬痛んだ。懐かしい思い出が蘇り、あの頃に戻れたらと十年間で一度も考えなかったことを思ってしまう。

「あっ!」

油断した一瞬の隙にサメの式神に足を噛まれ、そのままビルの壁に体を投げられる。強い衝撃と痛みが走り、桐子は咳き込む。
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