聖夜のおとぎ話
「メリークリスマス」
「…呑気め。遅刻だよ」
頭にポンと乗った手に、私の冷たい手を被せた。
ごめんごめん、と一ミリ足りとも悪いと思っていない風に微笑む彼は、去年と何も変わっていなかった。
私の手を緩く握るけれど、私たちの関係に名前は無い。
碓氷 小麦(うすい こむぎ)。
性別、男。好きな色は白色。
身長は…去年は180って言ってたけど、今年はもっと伸びたのかもしれない。
職業、サンタ。
「少子化なのかな、子供が多くてプレゼント配るの時間かかった」
「一年でそんなに変わるもの?ただのサボりでしょ」
私の目の前にいるのは、正真正銘サンタだ。
トナカイに引っ張られながら空を飛び、煙突……は分からないけれど、寝ている子供たちにプレゼントを届ける。