聖夜のおとぎ話
不意打ちで好きな人からの“好き”を貰えて、冷静でいられるほど私は賢くない。
小麦の制服のセーターに涙が滲んだ。
小麦は、「会えないって言おうとしたわけじゃない」と、私の頭の上で小さく零した。
「―――だから、クリスマス以外にもこうやって冬侑と会いたい。
そう言いたかったんだけど、どっかの誰かさんが逃げるから」
「…どういう意味?」
「…理解してよ。
好きだって言ってる。冬侑が好きだよ」
腕が緩んで、やっと小麦を見上げると、一瞬だけ唇が触れた。
「返事は知ってるよ」
「…“いいえ”だったらどうするの、ばか」
「“はい”って分かってるからしたんだよばか。分かりやすすぎて毎年離れがたかったわ」
…そんなに。
だったら小麦から言ってくれても良かったのに…と思うけど、多分小麦は見習いが終わってから、だとか決めていたんだろう。