Hello,僕の初恋
「大丈夫よ、ノンは可愛いよ」
アヤがそう言って、私の肩をぽんと叩く。
「うんうん可愛い! あとでトイレでチェックしてあげるね」
ノゾムくんのことを気にしていると思ったのか、美羽が任せなさい! といった顔で励ましてくれる。
ライブがはじまるまで、あと一時間。
ノゾムくんたちのバンドは五組中一番目を担当するらしく、その中でも新曲を最初に披露すると聞いている。
つまり、あと一時間きっかり経てば、私の歌詞が会場にいるみんなに向けてお披露目となるのだ。
「ひゃーん。緊張してきたぁ」
「それは歌詞のこと? それともノゾムくんのこと?」
なんて美羽がからかうので、私は大声で「歌詞のこと!」と叫んでいた。
海風がびゅうっと舞って、遠くに見える海面を激しく揺らしていた。