Hello,僕の初恋



夢みたいだと思った。



ノゾムくんが緑色のベースを掻き鳴らしながら、私の方を見る。

数秒目が合って、私は泣いた。

ノゾムくんは緩やかに笑っていた。




緑色に光る楽器のボディと、そこから伸びる四本の弦を、巧みに操る長い指。


少し茶色がかった、私と同じゆるいくせっ毛。


弧を描くやさしい幅広の二重まぶた。すっとした鼻。


袖まくりした色白の腕と、似合わない筋肉。


その人の周りだけ、虹色に光っているように見えた。





ああそうか、そうなんだ。

私はあの時晩秋の体育館で、ノゾムくんの演奏を聞いた時からずっと。



分かった。分かってしまった。

分かってしまったよ。



答え合わせなんてもう、とっくに出来ていた。





私はノゾムくんが好きだ。





どうしようもないくらい好きだ。

好きで好きで、泣いちゃうくらい好き。



曲の終わりは、ヴォンと響くベースの重低音。

彼が鳴らすその音で締めくくられて、辺りに拍手が鳴り響いた。



どうしよう、涙が止まらない。
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