Hello,僕の初恋
「あ、もう八時だ。もう帰らなきゃ。最近親厳しくてさ」
しばらく打ち上げを楽しんだ後、美羽が時計を見て言った。
「はぁ、アツキ先輩の周りは人だらけだったね~。近寄れないや。ノンはまだいる?」
「……私も帰ろうかな」
「ノゾムくんと話さなくていいの?」
今日はいっぱい楽しめたし、いい思い出が出来た。
ノゾムくんとはまた後日、ゆっくりお話すればいいだろう。
それに、今話したらたぶん……。
「緊張して話せないと思うし」
ぽつりとそう零すと、美羽はニヤニヤした顔で私の肩を叩いた。
「はーん、さては自覚したなぁ? Hello,僕の初恋だね? いいじゃんいいじゃん。応援するよ!」
ノンもついに自覚したかあ、そうかあ、といった顔をして、美羽は私の目を見る。
途端に体が熱くなるのが分かった。
私は言い訳もせず、小さくこくりと頷く。
Hello,僕の初恋。
そう、間違いない。
あの曲は、私の等身大の気持ちなのだから。
私の気持ちを知った美羽は、なんだかとっても嬉しそうだ。
「アヤは置いて帰っていいかな?」
アヤの方を見ると、アイトくんと楽しそうにお喋りしてるのが見えた。
「いいんじゃない? いい感じっぽいし。直子はどこ行ったんだろう」
「ショウくんもいないね」
「まーた二人でどっかでラブラブしてんでしょ。さ、帰ろう」
直ちゃんとアヤにラインを入れて、私たちは会場を後にする。
ミカ先輩にだけ、「お先にお疲れ様です」と声をかけて帰った。