Hello,僕の初恋
文化祭
十一月といっても終盤となれば、秋というよりもう冬だ。
文化祭当日の空はどんよりとしたくもり空で、山から下りてきた風がイチョウの葉を飛ばしていった。
私たちが住んでいるのは坂の街で、県立南高校はその中腹にある。
二階や三階の教室からは、坂の下に広がる海が見渡せた。
私はこの景色が好きだ。
世界で五本の指には入る美しさなんじゃないかと、ひっそり思っている。
ノンがまた変なこと言ってるってばかにされちゃうから、誰にも言わないんだけれど。
この日文芸部の部室から見下ろした街は、いつもより薄い空気を纏っていて、冬をつれていた。
じきに北側の山のてっぺんが白くなりはじめるだろう。
想像するだけで胸がわくわくしてくる。
朝のもやに覆われた街に想いを馳せていると、景色にそぐわないゴミ収集車の音楽が流れてきて、雰囲気を台無しにした。