Hello,僕の初恋
一月の風がびゅうっと吹く。落ち葉がカサカサと音を立てて舞った。
数日前は雪が降りそうなくらい寒かったのに、今日はとても暖かい。
ニットのセーターを着てきたのを、少しだけ後悔した。
楽器ケースからベースを取り出し、ノゾムくんの方を見る。
おじいちゃんの部屋にあったうちの一本だ。
「フェンダーのベースだ」
「えへへ、おじいちゃんの部屋から持ち出したの。もっと高そうなのもあったけど」
木目調のボディが光るそのベースを、ノゾムくんは興味深そうに眺めている。
嬉しそうな顔で、ベースを見つめるノゾムくん。
その左手はギプスで固定されているので、もちろん弾くことは出来ない。
彼の幅広の二重まぶたが、緩やかに弧を描いた。
私は嬉しそうに笑う彼を見つめながら言った。
「私ね、おじいちゃんにひとつだけ習った曲があるんだ」