Hello,僕の初恋
うちの西の端の、おじいちゃんの音楽部屋。
そこでおじいちゃんは、私とお姉ちゃんに『きみたちでも弾ける曲』を教えてくれた。
私は指が上手く動かせなくて途中で諦めたんだけど、お姉ちゃんは頑張って練習していたっけ。
おじいちゃんは弾きやすい簡単な曲だって言ってたけど、簡単な曲ほど難しいって、今なら分かるよ。
私がベースを構えると、ノゾムくんが目を見開いた。
「アンプにも繋いでないし、下手っぴだけど、聞いてくれる?」
陽だまりの中で、ノゾムくんがこくりと頷く。
「有名な曲だよ」
私はそう言って、左手の指を開く。
昔おじいちゃんに教えてもらったコード進行。
いつまでも覚えられなくって、この前お姉ちゃんに教え直してもらったのは秘密にしておこう。
きみのために一生懸命練習したんだよ。