Hello,僕の初恋
ロックンロールが始まる

今日からカレンダーは二月に入った。



三年生は仮卒期間に入り時間が有り余っているらしく、ミカ先輩は自宅でベースの練習に勤しんでいるらしい。



今日はミカ先輩が初めてうちに来て、おじいちゃんの音楽部屋で練習することになっている。

私の授業が終わる時間にミカ先輩が迎えに来てくれて、ふたり並んで急勾配の階段を歩いて下りた。





「ノンちゃん、ノゾムから送られてきた新曲の音源聞いた?」



寒い日が続いているせいで、ミカ先輩の吐き出す息は白い。

歩道の脇には梅のつぼみが、赤々と色をつけている。もう春が近い。



「はい。昨日送られてきて、すぐ聴きました」



私の吐く息も白い。そ

のうち空気に溶けて、すうっと空へ昇っていった。



街を見下ろすと、温泉街から昇っている湯けむりが、まるで冬の吐息のように見えた。

今日はよく晴れている。



街は夕焼けに包まれていて、青からオレンジ、紫、藍と不思議な色のグラデーションを成していた。



「私、曲聴いてすぐ歌詞書いちゃいました」

「本当!? 見せて見せて」

「うちに着いてからですよっ」



いつもは長く感じる坂道だけど、誰かといっしょだととても短く感じる。

夕焼け色に染まったアスファルトを踏みながら、私たちは軽々と階段を下りていった。
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