Hello,僕の初恋
卒業ライブ
風の吹くように月日は過ぎる。
ぼうっとしていたらそれは一瞬のうちに過ぎ去って、心と身体を置き去りにしてしまいそうなほどだ。
ドジで泣き虫で、おまけに臆病者。
そんな私には、表舞台に立つことなんて一生ないんだろうと、そんな風に考えていた時期があった。
けれどもあの日、体育館のステージで緑色のベースを掻き鳴らすきみを見た時から。
きっと、その隣に立ちたいと願っていたのだろう。
ライブはひとりじゃ成り立たない。
バンドのメンバーだけでなく、照明、設営、音響、裏方の仕事もたくさんある。
そして、私が任された『作詞』の仕事。
私が私らしくやれること。
きみの力になれること。
隣に立つこと。
それが私には、嬉しくてしょうがないんだ。
三月十二日。
よく晴れた日の午後。
五組のバンドが集まるこの『卒業ライブ』で、アツキ先輩とミカ先輩は卒業する。