Hello,僕の初恋

午後一時半。



駅前の銅像の前で待ち合わせをしたノゾムくんは、今日はベースを背負っていない。

私が来ると笑顔で手を振ってくれた。



彼がとても楽しみにしていた、幼なじみを送り出すための大切なライブ。

彼は今日、得意のベースを弾くことは出来ないけれど。

それでも彼なりに楽しもうとしているのか、満面の笑みを見せていた。





「花音ちゃん、誘ってくれてありがとう」



春のあたたかく強い風が、私たちの背中を押す。

大丈夫だよって応援されているみたいで、心がすっと楽になった。



「足、大丈夫?」

「うん。杖ついてれば、立ちっぱでも大丈夫」

「しんどくなったら言ってね」



ノゾムくんの右足からギプスは外れ、服の上から見れば何の怪我もないように見える。

まだ少し痛みがあるらしく、杖をつきながらゆっくりとしか歩くことが出来ないらしい。



右手の包帯は完全に取れて、左手のギプスも外れていた。

けれども肝心の指は固定されたままで、もう少し演奏活動は控えた方がいい、とのことらしかった。
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