Hello,僕の初恋



ベースを弾くきみに恋をした。



緑色に光る楽器のボディと、そこから伸びる四本の弦を、巧みに操る長い指。


少し茶色がかった、私と同じゆるいくせっ毛。


弧を描くやさしい幅広の二重まぶた。すっとした鼻。


袖まくりした色白の腕と、似合わない筋肉。


その人の周りだけ、虹色に光っているように見えた。





ベースを掻き鳴らすきみに恋をした。



晩秋の体育館できみを見たあの瞬間を、私は一生忘れない。

忘れられない。

運命だ、と思った。





今きみは、ベースを弾くことが出来ない。

左手は怪我をして固定されたままで、傷も癒えていないまま。



それでも真っ直ぐステージを見つめるきみが、きみの作った音楽に涙を流すきみが、

世界でいちばん綺麗に見えるよ。



きっと君がどこにいても。何をしていても。

きみは世界でいちばん綺麗なものを見せてくれる。



だから、私もきみに綺麗な景色を見せてあげたい。



隣にいるよ。

いつもここにいるよ。





きみのことが、大好きだから。





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