Hello,僕の初恋

『Hello,僕の初恋』、『群青、僕ら』と続いて、ブラックコーヒーの面々がお辞儀をする。



照明が消えて、彼らが奥へと引いていくのが分かった。

ステージでは次のバンドの準備が進められている。



ノゾムくんは力が抜けたように腰を下ろし、体重に任せるまま椅子に座った。





「花音ちゃん」



ノゾムくんが目に左腕を当てて、拭うような仕草をする。



表情はみえない。

右手はしっかりと繋がれたままだ。



「そばにいてくれて、ありがとう」



次のバンドが始まるまでの間、私たちは声をあげて泣いた。

周りの視線が痛かったけど、気にせずおんおんと泣いた。



終演のころには、ふたりともすっかり水分が抜けて目が真っ赤になっていて。

それがおかしくって、ふたり笑った。
< 241 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop