Hello,僕の初恋
それから、私たち。
今日はノゾムくんがうちの音楽部屋に来ることになっていて、今は駅からうちまで細い路地を歩いているところだ。
小さな道だけど桜並木になっているので、散歩をしている人も多い。
少し歩いただけで、桜の花びらが髪の毛に絡まりついてくる。
「うあー、緊張する」
「大丈夫。今日おばあちゃんもお母さんもいないし」
そう言うとノゾムくんは顔を真っ赤にして、「ますます緊張するんだけど」とこぼした。
「あ、でもお姉ちゃんが突然帰ってくるかも」
「えっ」
「話しかけられても無視していいからね!」
手を絡めて、二人で桜並木道を歩く。
ノゾムくんの手も足も、もう包帯は巻かれていない。
左手の指もすっかり完治して、そろそろベースの練習を再開してもいいと言われたそうだ。
ほどほどに、との条件付きらしいけど。