Hello,僕の初恋
「おじゃまします!」
誰もいないと言ったのに。
ノゾムくんははきはきした声で挨拶をして、うちの玄関をくぐった。
私はそれがおかしくてけらけらと笑う。
階段をひとつひとつ上がって、西の端の部屋へと向かった。
午前十一時。
この時間なら、まだ西からの陽は射し込んでこないはずだ。
私が一歩前を歩いて、ノゾムくんがあとをついてくる。
銀色の丸いドアノブを掴んで、そっと扉を開けた。
「どうぞ」
私が先に部屋に入って、ノゾムくんが一歩踏み込む。
おじいちゃんの音楽部屋に入った瞬間、ノゾムくんはぽかんと口を開けて、子どものように目をきらきらさせた。