Hello,僕の初恋
「すごいや」
ガラスケースの中に並ぶエレキベースとアコースティックベース。
ギブソンに、リッケンバッカー? だっけ。
ミカ先輩が言っていたのと同じ言葉が、すらすらと聞こえてくる。
最後に『ヤマハ』と聞こえて、やっぱり楽器メーカーの名前だったんだと思った。
「弾いてもいいよ?」
「本当に!? っわ、触るの怖いな」
私がガラスケースの扉を開いて、どれにする? と問うと、ノゾムくんは迷いに迷って一本のベースを指した。
「じゃあ、このリッケンバッカー、弾いてもいい?」
「どうぞ」
「すごい。ベーシストの憧れだよ」
「初めて聞いた」
「ベーシストの孫なのに?」
私の音楽知識の無さに、ノゾムくんがお腹を抱えて笑う。
本当にそうだ。
ベーシストの孫なのに、きみに出会うまではロックンロールさえ聴いていなかったんだから。
傷跡の残るノゾムくんの左手。
人差し指、中指、薬指と小指。
ひとつずつが弦の上に乗せられて、右手の人差し指で弦が弾かれる。
ヴォン。