Hello,僕の初恋
今この空間にいる全ての人の動きがスローになって、周りの景色がゆっくりとミラーボールのように回り始めた。
もちろん実際にはそうじゃない。
でも私にはそう感じることしかできなかった。
ロックンロールが私の人生に与える影響なんて、ほんの一ミリもないと思っていた。
うちの西の隅にあるおじいちゃんの音楽部屋で、丁寧に磨かれた楽器の側面が、ほんの一瞬虹色に光った時。
ほのかな光を見たその数秒間でさえ、自分には関係のないことだと信じきっていた。
私は大きな勘違いをしていた。
ヴオンヴオン。重低音が踊りはじめる。
全身が震えると同時に、顔を上げた。
私の真正面、数メートル先、ベースの立ち位置にあたる場所で演奏をしているひとりの男子生徒が目に入る。
緑色に光る楽器のボディと、そこから伸びる四本の弦を、巧みに操る長い指。
少し茶色がかった、私と同じゆるいくせっ毛。
弧を描くやさしい幅広の二重まぶた。すっとした鼻。
袖まくりした色白の腕と、似合わない筋肉。
その人の周りだけ、虹色に光っているように見えた。
この人が、曽根崎望という人なのだろうか。