Hello,僕の初恋
「アツキー!」と誰かが叫ぶ。
アツキ先輩が「ありがとう! 聴いて下さい、『群青、僕ら』!」と叫んで、会場がわーっと盛り上がった。
会場のほとんどがアツキ先輩に釘付けになっているというのに、私は目の前にいるベースの彼から目を離すことができない。
おじいちゃんと同じ重低音だから、それもあるかもしれない。
けれどもそれとは違う何かが、私の胸の中で渦巻いていた。
会場の中で左側に流されたことも、運命だったのかもしれない。
そんなことを考えてしまうくらいに、私はその音に夢中になっていた。
恐怖も不安も消えていた。
それは世界でいちばん綺麗なもので、初めての気持ちをつれて、颯爽と現れたのだった。
ヴオンとまた音が鳴って、曽根崎望その人が笑った。