Hello,僕の初恋



「痛っ……」



ほら、見たことか。

自他共に認める超不器用な私は、作業を始めてものの五分でカッターで親指を切った。



お母さんやお姉ちゃんがここにいたならば、『ぼけーっと空想にふけっていて怪我をした』と言われたことだろう。

そう言われたところで、それは間違ってはいない事実なんだけど。

皮膚の上には鋭い線が浮かびあがり、それに沿うようにして、鮮血がぷつりと滲み出てきている。



「ノン! また怪我してるじゃない!」

「直ちゃん~!」



直ちゃんこと稗田直子(ひえだなおこ)は、小学校からの私の親友だ。

優秀で、しっかりもので、おまけに美人。

天に二物以上を与えられすぎている親友・直ちゃんは、ブレザーのポケットからささっとティッシュを取り出すと、一~二枚つまんで私の指に被せた。



私がぼーっとしている間に直ちゃんは手際よく血を拭き取り、

カバンの中からポーチを、さらにはその奥から絆創膏を取り出して、私の親指に巻きつけていく。



ほんの一分もかからないうちに、傷の手当は完了した。



「はい。しばらく押さえててね」

「直ちゃん、ありがとう」



じくじくと親指が痛むと同時に、私の胸はきゅうっと締めつけられた。



また、やってしまった。

クラスメイトが全員こっちを見ているような気さえしてくる。

悔しさで涙がこぼれそうだ。



たったこれだけのことで、私はすぐに泣いちゃいそうになる。

そしてこういうドジな出来事が、毎日のように起こるのだ。
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