Hello,僕の初恋



「ねー、ノンなんか変じゃね?」



アヤがそう言うと、美羽が「ノンはいつも変だよ」と私の頬をつねった。



ここでからかわないでよ~と笑いはじめるのが私の性格だ。

けれどもこの日の、私のぼーっと具合は普通じゃなかった。

美羽の言葉に反応もせず、体育館から伸びる渡り廊下の、その屋根につながるパイプにもたれかかって、橙色の空を仰いだ。



オレンジと水色、藍、それから紫色のグラデーション。

夕陽を浴びてきらきらと光るイチョウの葉。

まるで、ライトが角度を変えるたびに色を変えた、彼の楽器のボディみたいだ。





「恋の匂いがするぜ」



アヤが私の顔をじーっと見て、そう言った。



「恋!? ノンが!? 誰誰!? アツキ先輩じゃないでしょうねぇ!」



アツキ先輩狙いの美羽が、睨み顔でそう言う。

私ははっと我に返って、にひひ、と笑った。
< 31 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop