Hello,僕の初恋
「ねー、ノンなんか変じゃね?」
アヤがそう言うと、美羽が「ノンはいつも変だよ」と私の頬をつねった。
ここでからかわないでよ~と笑いはじめるのが私の性格だ。
けれどもこの日の、私のぼーっと具合は普通じゃなかった。
美羽の言葉に反応もせず、体育館から伸びる渡り廊下の、その屋根につながるパイプにもたれかかって、橙色の空を仰いだ。
オレンジと水色、藍、それから紫色のグラデーション。
夕陽を浴びてきらきらと光るイチョウの葉。
まるで、ライトが角度を変えるたびに色を変えた、彼の楽器のボディみたいだ。
「恋の匂いがするぜ」
アヤが私の顔をじーっと見て、そう言った。
「恋!? ノンが!? 誰誰!? アツキ先輩じゃないでしょうねぇ!」
アツキ先輩狙いの美羽が、睨み顔でそう言う。
私ははっと我に返って、にひひ、と笑った。