Hello,僕の初恋
長い長い階段を下る。
このまま景色の中に溶け込んでしまいそうだ、なんて思った。
冬の温度は私の心をいつもよりずっと透明にさせる。
ノゾムくんは私の一歩先で立ち止まって、そして振り返った。
彼のくせっ毛が風に吹かれる。街灯の光を透かした茶色い髪が、さらさらと揺れる。
どきどきした。
「ねえ、花音ちゃん。詩を書いてよ」
「え?」
「俺たちのバンドのために詩を書いてよ。
クリスマスに文化ホールでライブをするんだ。
新曲の音は出来てるけど、俺たち誰も詩の才能なくてさ。
俺なんて国語の成績、毎回赤点ギリギリなんだよ?」
「私が詩?」
「うん、花音ちゃんがいいんだ」