Hello,僕の初恋



「ノン、昨日はごめんね。私がショウと外で話してたから……。知らない人いっぱいいたし、イヤじゃなかった?」

「昨日? ああ! 打ち上げね。ううん。楽しかったよ」



直ちゃんが両手を合わせて謝ってきたので、私はふるふると首を横に振った。

人に謝られるのはあまり好きじゃない。



直ちゃんは私の横に並ぶと、歩きながらこちらを覗き込んだ。



「メッセージきてたけど、途中で帰っちゃったでしょ?」

「あー、うん……でもね……。ふふふ」



昨日のことを思い出すだけで顔が熱くなって、私はコートのボタンを外した。

山から下りてきた風が、服の隙間から吹き込んで私の身体をちょうどよく冷ます。



昨夜は気持ちが昂ってなかなか眠れなかった。

あの出来事をどう説明しようか迷っているうちに、私たちは階段の頂上へとたどり着いていた。



坂を上りきったところにある県道にまたがる横断歩道を、私たちは向こう側にある校舎を目指して渡る。

直ちゃんは不思議そうな顔をして、私の方を見ていた。
< 56 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop